不安と恐怖の中で初陣に臨んだシンジだったが、操作もおぼつかない状態で、使徒のなすがままであった。
左腕、次いで頭部に壊滅的な打撃を受け、活動停止状態に陥る初号機。
絶体絶命のピンチになる。
そして気が付くと、シンジは病室のベッドにいた。
寸断した記憶。
退院したシンジは、父とは同居せず、施設内の個室を住居とするように指示を受けるが、葛城ミサトはそれに激しく抗議。
彼女はシンジを自分の同居人として迎える事を決め、有無を言わさず彼を自宅マンションに連れて帰る。
その夜、散らかり放題の部屋で、2人だけの歓迎会が始まる。
豪快にビールを飲み干し、シンジの内気な性格に説教をするミサト。
高いテンションで初日の夜は更けていゆく。
年上の女性のだらしなく無防備な生活ぶりに戸惑いながら、シンジの新しい生活がスタートした。
疲れてベッドに横になり、見知らぬ天井を見つめながら、シンジは初めて使徒と戦ったあの日の夜の事を思い出していた。
再起動、暴走、反撃、そして使徒の自爆。
EVAの圧倒的な強さの前に使徒は滅び、最悪の事態は回避されたが、全ては彼の意思とは無関係に起きた出来事だった。
そして、EVAの頭部装甲の内側にあった、あの目。
まるで、鏡の中に醜い自分を見たような生々しい感覚。
嫌なことしか思い出せずにいた。
暗闇の中でもだえ苦しむシンジに、ミサトは優しく声をかける。
あなたは街を救ったのだから、それを誇っていいのだと。
だが、曖昧な記憶しかない彼に、そんな自信などなかった。